今の自分自身の仕事環境に、「もっと働きやすかったらいいのにな」「なんで副業解禁しないんだろう」などと、不満に思っていることはありませんか?

今回は、看護業界にいて感じた不満を自ら変革するために、海外留学に挑戦する寺本美欧(てらもと・みお)さんにインタビューさせていただきました。

自分自身が感じた業界全体の問題に対して不平不満を言うだけでなく、「自分が環境を変えよう」という強い思いを持って、まさに今一歩を踏み出したみおさんの姿からは、大きな勇気をいただくことができます。

▶︎プロフィール
看護師 寺本 美欧(てらもと・みお)さん
上智大学卒業。現在は地元の中核病院のSCU(脳卒中センター)で看護師として勤務。手術後の重症管理から、麻痺のある方へのリハビリ訓練、日常生活動作の援助、退院に向けての指導など業務内容は多岐にわたる。他にも、新人指導、日々のOJT指導係など院内教育にも携わる。
http://blog.livedoor.jp/chuochan/

目次

1. 心身の疲労により1年目で休職を経験。それでも看護師を続けたかった
2. 「私が日本の看護業界を変える」という強い思いから決めたNY留学
3. 2年間 仕事の隙間時間で勉強を続け、奨学金と大学院の合格を勝ち取る
4. 「すべての看護師に最高の学びの場を」想いを実現させるために

⒈ 心身の疲労により1年目で休職を経験。それでも看護師を続けたかった

大原看護師のお仕事は、体力的にも精神的にもすごくハードなイメージがありますが、実際はいかがですか?

寺本:実際、業務量は膨大です。実は私、1年目の終わりに、心身を崩して、退職してしまった経験があるんです。

大原:それは大変でしたね…。

寺本どれだけ大学や実習の中で一生懸命学んでも、実践となると全然違うんです。生身の人間に対して注射をすると、血管がどこにあるかわからなかったり、頭でわかっていても、実際にやってみると難しかったりして、毎日いっぱいいっぱいなのに、一度働き始めると学び直しの機会がほとんどなくて、すごく怖かったです。

(上智大学を首席で卒業。)

大原:そうして1年目の終わりに限界がきてしまったんですね。でもその後2ヶ月くらいでまた看護師として復職されていますが、他業種への転職は考えなかったのですか?

寺本:考えなかったですね。看護師の仕事内容自体はすごく好きだったんです。医者のように直接的に病気を治すわけではありませんが、看護師はそれ以外の全てをサポートできるんです。
例えば、化粧水でスキンケアをしてあげたり、髪をとかしたり、髭を剃ったりするのも、看護師の大切な仕事だと思っています。そうやって1人1人の幸せと丁寧に向き合って、支えることができる看護の仕事は、すごくやりがいがあります。

(看護師として勤務中の1枚。)

大原:看護師の忙しさは、そんな素敵なやりがいと表裏一体なんですね。

⒉ 「私が日本の看護業界を変える」という強い思いから決めたNY留学

大原:そうしてせっかく大好きな看護師の仕事に復職できた今、どうしてまた職場を辞めてまで、海外留学に挑戦されるのですか?

寺本:それは、今の職場の居心地が良いからこそ気づけた、日本の看護業界の問題を、私が解決したいと思ったからです。

今の病院は、規模が小さい分すごくアットホームで、看護師1人1人に対するサポートも手厚くて。若い看護師には全員メンターがついて毎月面談があるので、みんなすごくモチベーションが高いんです。

一方前の職場は、大学病院で規模も大きく資金もあり、設備や教材は充実していましたが、みんなすごく忙しいので、「困ったことがあっても自分でなんとかするしかない」という状態でした。
そのため、取り残されてしまう人もいた、というのが正直なところです。

(いつも笑顔で、大変さをおくびにも出さないみおさん。)

大原:なるほど。確かに人の命に関わる仕事を、自分1人で、仕事と両立して人の命に関わる分野を学び続けるのはのはすごく難しそうですね。

寺本:そうなんです。だからこそ、忙しい合間に学び直しができる仕組みが日本の看護業界には必要だと感じ、大人が学ぶことに着目した「成人教育、アンドラゴジー(andragogy)」という分野に興味を持ちました。

大原:「成人教育」という言葉を初めて聞きました。それが留学のきっかけになっているんですね。

寺本:はい、成人教育の分野は海外の方が進んでいて、専門的に学ぶことができるので、NYにあるコロンビア大学の教育大学院のAdult learning & Leadership programという、成人教育とリーダーシップを学ぶ修士課程に進学します。「大人が目的を持って主体的に学ぶ」ことを看護に取り入れたいと思ったんです。

大原:看護に成人教育を取り入れるとしたら、具体的にはどのようなイメージですか?

寺本:今私が考えている取り入れ方は、大きく2つあります。1つが、新人看護師が、実際に働き始めてから業務に慣れるまでをサポートする教育制度と、潜在看護師の復帰をサポートする教育制度です。
潜在看護師とは、看護師の資格を持っているけれど看護師として働いていない人のことを言うのですが、現在日本にはなんと、700万人程度いると言われています。

(ストイックで、勉強家なところは大学時代から変わりません。)

復帰できない一番の理由は、第一線を外れると最新の知識についていけない、そして学び直しの機会もない、ということが大きいです。そんな潜在看護師の方が復帰できる足がかりになる教育制度を作ることも構想しています。

⒊ 2年間 仕事の隙間時間で勉強を続け、奨学金と大学院の合格を勝ち取る

大原:留学しようと思っても、何から始めれば良いのかわからない人も多いと思います。具体的にはどんな準備が必要なんでしょうか?

寺本:まずはやはり語学力です。私は2年間、毎日仕事後に英語の勉強をする生活を続けてきました。1年ほど経って、満足のいく英語の点数に達してから、本格的に留学の出願準備に取り掛かりました。出願準備は丸1年かかったので、2~3年は準備期間にあてると考えて進めた方がいいかもしれません。

大原:看護師の仕事と留学準備を2年間続けてきたなんて、ものすごくハードだったのではないでしょうか…?

(留学準備で渡航したNYにて。)

寺本留学準備は想像以上に大変でした。まずはTOEFLやGREの語学のスコアを最低限クリアすること、そしてその次には提出書類の準備と奨学金の提出書類の準備、そして面接の準備を並行して行いました。

大原:並行して準備するに当たって時間の使い方はどのように工夫されていたんですか?

寺本:「仕事が終わったらきっぱり留学準備に切り替える!」と意識的にメリハリをつけることで、仕事と両立させました。看護師は日勤・夜勤と不規則勤務ですが、あえて夜勤の前後の時間を有効活用したりしました。留学準備があったからこそ、自宅に帰っても仕事のことを引きずることなく切り替えることができた部分もあります。

※大学提出書類
・Statement of Purposeと呼ばれる志望理由書
・CVと呼ばれる履歴書
・自分を推薦してくれる人の推薦状
など。

※奨学金
・日本の財団
・組織の返済不要の奨学金(JASSO(日本学生支援機構)
など。

⒋ 「すべての看護師に最高の学びの場を」想いを実現させるために

(みおさんの内側には熱い想いが秘められています。)

大原:負担の大きい留学準備を乗り越えるには、かなり強い思いが必要だと思うのですが、みおさんの高いモチベーションの源はどこにあるのでしょうか?

寺本「すべての看護師に最高の学びの場を」という想いが全てです。その想いを実現させるための方法は、留学後また臨床に戻って、地道に成果を積み重ねているかもしれませんし、企業に就職して看護系のオンラインツールの開発に携わったり、教育系のコンサルト会社を起業したりと、いくつもの道を考えています。

きっと留学中たくさんの刺激をもらって将来のキャリアに繋がる何かを見つけることができると思うので、帰国後のキャリアはあえて絞らず、未来のビジョンは大きく捉えています。

大原:手段を幅広く検討されているんですね今そのビジョン実現に向けて留学準備以外でやっていらっしゃることはありますか?

寺本:今は、ブログで自分の想いを発信して仲間を増やしたり、関連する企業に連絡をして、協働できないか打診したりしています。結構IT系の企業は興味を持ってくださいます。私1人では難しいかもしれませんが、どんどん同じ想いの仲間を増やして、看護業界に新しい風を吹かせていきたいです。

(NYにて。)

大原:留学先で勉強以外に挑戦してみたいことはありますか?

寺本:持ち前の行動力で、たくさんのわくわくするプロジェクトを実行していきたいと考えています。まずは留学中の自分の様子を記録に残し、日本で働く同業者の方や看護学生さんにもシェアできるようにウェブサイトを立ち上げるつもりです。名前はNLL (Nursing Learning Lab)で、看護×学びを考えるためのラボという意味です!

大原:リアルタイムでみおさんの学びや活動を拝見できるのはすごく楽しみですね。

寺本:また、その他にもアメリカの病院を巡ったり、看護系の大学にも訪れてみたいです。日本だと門前払いも多いですが、アメリカは熱意を伝えれば快く歓迎してくれるので迷う前に行動、そしてチャレンジしていきたいです!

(人生の軸を持ち、前に突き進むみおさんは、まさにミレニアル女性のロールモデルそのもの。)

大原:どうしてそこまで情熱的に生きられるんですか?

寺本:私は、‘I’m where I’m meant to be. ’という言葉をすごく大切にしているからだと思います。これはディズニーの『塔の上のラプンツェル』にでてくる歌の一節なのですが、「ここが私のいるべき場所」という意味です。大学生から社会人、社会人からまた学生、と環境が大きく変わっても、いつでも「ここが私のいるべき場所」という気持ちで、自分の使命を全うしたいと強く思っています。

ずっと塔の中に閉じこもって狭い世界で生きてきたラプンツェルが初めて外の世界に踏み入れたときの思いと少し重ねてしまいます。日本を飛び出して知らない世界を見る、新しい人と出会う、新鮮な環境で生活するという経験はストレスも多いかもしれませんが、この言葉を胸に、乗り切っていきたいです。

大原:まさにみおさんにぴったりの言葉ですね。今日は素敵なお話をありがとうございました。これからみおさんのパワーによって、日本の看護業界が変わっていくことがすごく楽しみです!
 

編集後記

どれだけ大変なことがあっても、笑顔でポジティブに、前に進み続けることをやめないみおさんの生き様は、業種の壁を越えて、大きな勇気を与えてくださいました。

環境に問題があるなら、自分が変えればいい。
一歩ずつ進んでいけば、必ず世界は変えられる。

そんな言葉だけで聞いたら綺麗事と思われてしまいそうなことも、みおさんの姿を見ていれば、本当だと信じられる強さを感じました。

ニューヨーク留学でさらにパワーアップする姿も楽しみに応援しています!

子育てしながら自分らしくWebデザイナーとしての働き方を歩み始めた女性の話はこちら

【インタビュー】

SHEshares編集長 
大原光保子
上智大学社会福祉学科卒業(https://www.sophia.ac.jp/)「母と娘の関係/幸せの在り方」について研究。
「すべての女の子が自分らしく輝ける世界を作る」ために生きる。美容を通した国際協力を行う学生団体の立ち上げ、美容動画メディアの立ち上げ、ゼクシィ営業を経て、SHEに入社。将来の夢は作家。
文章とウイスキーが大好き。
Twitter:@Sara25Mipo
退職エントリ:https://shares.she-inc.jp/posts/4771028
エモい自己紹介記事:https://shares.she-inc.jp/posts/4482913

【執筆】

SHEsharesライター 小野千夏
薬剤師/ライター/イベント企画/darenani~だれかのなにかのきっかけに~
薬剤師として身体の健康を支えるだけでなく、女性のライフスタイルも支えたい!と思い、ライターへ。
人やモノの思いを知ることが大好きです。エッセンス探しの毎日。
Twitter:@darenaniwite
Instagram:@darenaniwrite
自己紹介記事はこちら

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