選んだ道を正解にする。モデラート代表市原明日香さんの自分らしい仕事の作り方

自分らしいと思えるお洋服を着ると、何だかいつもより自分に自信が持てる気がする。

そんな想いが広がって共感を生んでいるスタイリングサービス、SOÉJU personal(ソージュパーソナル)
作り出したのは、ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社でマーケティング担当として働いていた市原明日香さんです。

「仕事が大好き!」と断言する市原さんですが、これまで、さまざまな人生の岐路に立ち、決断をせざるを得ない状況を切り抜けてきました。

そんな彼女が見出した、”選んだ道を正解にする”生き方とは?
素敵なディスプレイのサロンでお話を伺ってきました。

市原 明日香(いちはら あすか)
1976年生まれ。東京大学教養学部卒。2児の母。アクセンチュア株式会社で3年間経営コンサルティングに従事。ルイ・ヴィトン ジャパン株式会社にて4年間CRM(カスタマーリレーションシップマーケティング)に従事。息子の闘病、フリーランスの期間を経て、2014年にモデラート株式会社を設立。

目次

⒈ ”誠実さを自分でコントロールしたい” 起業のきっかけ
⒉ 「仕事が好き」という思いが原動力になる
⒊ お客様には「中立的に寄り添う」のがポリシー
⒋ 人生を振り返って
 

⒈ ‘‘誠実さを自分でコントロールしたい” 起業のきっかけ

山越:もともとはコンサル会社やアパレルで働かれていたと思いますが、起業のきっかけはどんなところにあるのでしょうか?

市原さん実は私の起業って、ちょっと特殊な事情があったんです。

きっかけは長男の病気になったことでした。看病があって仕事を続けられなくなったので、そのときに仕事を辞めたんですね。

それで長男が良くなってきたタイミングでフリーランスで仕事を始めたんですが、 「このままフリーランスを続けるか、再度就職するか」と考えたときに、「家族に胸を張れる仕事をしたい」とすごく思ったんです。

山越:家族に胸を張れる仕事=起業だと思ったということでしょうか?

市原さんちょうどフリーランスの仕事をしている時に、東日本の震災があって。

息子たち二人は幼稚園だったんですが、「会社の都合に合わせて働いていて、息子たちのところに帰れずに不安な思いをさせてしまった」っていうのがすごく考えさせられるきっかけになって。

自分の仕事の仕方や時間を、自分でコントロールしたいと思ったんですね。

もちろんフリーランスも比較的時間のコントロールが自由ですが、もう一つ、息子たちに「世の中を良くするための仕事をしているんだよ」ってことをきちんと説明できるような仕事をしたいなと思ったんです。

そしたら、選択肢が起業になっていたという感じですね。

山越:起業すると大変なことも多いと思うのですが、どのように折り合いをつけているのでしょうか?

市原さん私、もともと仕事が大好きなので、365日仕事のことを考えてしまうんですよね。なので、折り合いという意味ではどうなんだろう…(笑)。

どうしても今日は息子たちのそばにいてあげたほうがいいなって思う時は、ある程度自由がきくのは良いところですね。

事業そのものの誠実さ、つまり社会に対しても家族に対しても難しいことをしない、シンプルに誰かの悩みを解決したり社会をよくするための事業にするというところは、自分自身でコントロールできています。

山越:SOÉJUのサービスは前職のアパレルの世界での課題感を持って構想されたんでしょうか?

市原さんアパレルの世界にいたからこその課題感というよりは、もうちょっと個人的な体験に基づく課題感というか。

私自身、世の中の大多数を占める価値観に近いと思っているんですよ。なので、自分が課題と思っていることは結構他の方もそうなんじゃないかなって。

山越:それは、どんなところからでしょう。

市原さん主婦にどっぷり浸かっていた期間があるので、金銭感覚もそうですね。いくらでも自由に使える状況ではないなかで、どうやりくりするか、みたいな。

そこで、自分自身が「一番困っていた事って何だろう?」と振り返った時に、洋服を選ぶのが結構苦しい時間だな、と。

この年代の女性って、たった1日の中でも色んなシーンがあるんですよね。そして、それぞれ「何着よう…」ってすごい悩んじゃうんです。
例えば、朝息子のサッカーの朝練に連れて行って、昼フリーランスで相手先に出かけて、それで帰ってきた後に PTA があるとか。

前の晩にクローゼットをひっくり返してあーでもないこーでもないって悩んだ挙げ句、翌日雨が降ったりすると「またイチから考え直さないと」って。

この時間って「ファッションを楽しむというよりは結構苦しい時間だな」と思ったんです。

山越:そこから、SOÉJUのスタイリングサービスが確立したんですね。

市原さん最初はもうちょっと気軽にやろうと思っていて、当時2014年ってアプリの立ち上げが流行っていた時代だったので、クローゼットを管理するアプリを作ろうとしたんです。

でも、その時に共感してくれた仲間たちとディスカッションしていく中で、「結局管理や整頓だけしても解決しないんじゃないか」となって。

やっぱり「解決策をプロがサポートするのが大事なんじゃないか」ということで、今のスタイリングサービスに繋がっています。

⒉ 「仕事が好き」という思いが原動力になる

山越:起業後はどんな苦労がありましたか?

市原さんそれまでは大企業にいたのですが、急に企業のブランドっていう後ろ盾がないところで働くとなった時に、やっぱり初めて会った相手に全然信用してもらえないんです。「この人は何者なんだろう?」って。

山越:もともと大きい企業にいたからこそ、ギャップがすごく感じられそうですね。

市原さん女性である程度年齢を重ねてからの起業で、さらに内容が男性はあまり共感しにくいものだったので、周囲にあんまり真面目に取り合ってもらえないことも多くて、そこはすごく大変でした。

「女性のお洋服の悩みを解決する」と伝えても、「それってユニクロとかザラに行けば解決するんじゃないの?」と言われることもありましたね。

山越:そこはどのように乗り越えたんでしょうか?

市原さん覚悟みたいなものが伝わると、「あ、この人本気なんだ」って思ってくれるのかな、と。このお店を出したこともその一つで、「お店出すってことは、この人は本気でビジネス立ち上げて行こうとしているんだな」と感じてもらえたんじゃないかと思います。

なにか新しいことを始めるときに、「外見から入る」って手があると思うんですが、それと似たように覚悟から見せて行く」感じですね。

山越:確かに、視覚的に覚悟を感じ取れると、本気なんだなと感じますよね。
そんな大変な中でも、市原さんのモチベーションになっているものはありますか?

市原さん二つあるんですが、一つはやっぱり「好き」っていう気持ちですかね。仕事は昔から本当に好きで仕事が大好きなんですよね。

息子が入院していたときも仕事ができないことが本当に辛くて、 外とのギャップが辛いから当時はSNS とかも遮断してたんです。なので、仕事にフリーランスで復帰したときも起業したときもたくさん苦労はあったんですけど、とにかく仕事できるってことが嬉しくて。

それにお洋服も好きなので、さらに楽しいです。「明日何仕入れよう」、「明日いらっしゃるお客様に何をご提案しよう」って考えること自体が生きがいになっています。

もう一つは、SOÉJUは自己資金での小さな立ち上げだったので、いろんな方に結構助けていただいて。そんな方々が信じてくれた事業を正解にしなきゃいけないっていう責任感みたいなものもありますね。

山越:家庭との両立では、やはりご家族の支えもあるのでしょうか?

市原さん一番子育てが大変だったのはやっぱり子供たちが小さかった頃で、長男が病気の時は母にずっと泊まり込んでもらっていました。
母の助けがなかったらやってこれなかったなと思います。母自身も仕事を続けたかったけれど、時代的に難しかったということもあって、応援してくれていました。

あとは保育園やシッターさんのサービスを上手く活用して、何とかやりくりしていた感じですね。

今となっては平日は仕事三昧なのですが、夫も協力的で助かっています。全然家事ができない人だったんですが、必要に迫られて料理も作ってくれるようになって(笑)。

その分、私はお店が11時オープンで朝は少しゆっくりスタートなので、夜にできない家事をまとめてしたりしています。

3.お客様には「中立的に寄り添う」のがポリシー

山越:ではここで、SOÉJUのカウンセリングの仕組みについても教えてください!

市原さん二つのパターンがあるんですが、一つはうちのお洋服を気に入ってご購入いただいた方に、そのお洋服の着こなし方をスタイリストがアドバイスする「商品にサービスがついてくるような形」のご提供です。

もう一つは「カウンセリング」をしているんですが、その方の価値観や悩み、どうなりたいかというのをスタイリストが深くお伺いして、うちの商品に関わらず色々ご紹介して、納得感のあるところを見つけていくというものです。

後者の場合はサロンに来ていただくこともありますし、 地方の方だとSkype などでお話しをすることもあります。その後は、毎月か3ヶ月に1度の季節ごとに、スタイリストがスマートフォンにスタイリングの画像をお届けするというサービスも展開しています。

山越:SOÉJUのカウンセリングに寄せられる不安や悩みは、どういったものが多いのでしょう?

市原さん30代中頃の方が多いということもあって、出産後に体型が変わった悩みだったり。

あとは単純にご年齢が変わってきたことで、「それまで好きだったブランドが似合わなくなってきたかも」といった悩みですね。

他にも、課長や部長に上がったタイミングで「今まではカジュアルな服装だったけど、しっかりしなきゃいけないんじゃないか」と思い始めて、どういう風に切り替えて行けばいいのかという悩みとか。

山越:女性は特に、多くの方が共感しそうなお悩みが多いですね…。
それらを解決するために、SOÉJUのサービスとして大事にしていることは何ですか?

市原さん不安な気持ちでいらっしゃるお客様が多いので、本当にシンプルに、「お客様に寄り添う」っていうところですね。

こちらで「このスタイリングがいいです」って押し付けるのではなくて、お客様の気分が上がって、より自分に自信を持って頂けるように、「中立的に寄り添う」ことを大事にしています。

山越:バランスを保ちつつ、ということでしょうか?

市原さんお客様の中には、「いろんなパーソナルスタイリングや診断を受けて、いいと思うものをすごく勧められたんだけど、どうもしっくりこない」とおっしゃる方が結構多いんですよね。

必ずしもスタイリストがいいと思うからお客様がしっくりくるとは限らないと思っていて、その辺りは慎重に探っています。

山越SOÉJUで取り扱っているアイテムの価格帯としては、「全然手が届かない」というよりも普段から使えそうなものが多いなと思いますが、それもこだわりなのでしょうか?

市原さんはい。私自身、専業主婦の期間があったので。専業主婦となると、働いていた頃から急に金銭感覚が変わるんですよね。「私、収入ないのに自分の見栄えのことにこんなにお金使っていいのかしら…」みたいな。

でも、そういう方がまた次にお仕事をはじめようと踏み出す時に、納得感のある価格でつながったらいいなって思っています。

実際にサロンにある服をいくつかおすすめしてもらいました。

⒋ 人生を振り返って

山越:市原さんが「仕事が楽しい」と思う源泉は、どんなところにあるのでしょうか?

市原さんそうですね、私つくづく接客が好きで。お客様と接して反応が返ってきたり、自分が丹精込めて作ったものを喜んでいただけるのがすごく嬉しいですね。

あとは、スタートアップっていう形でSOÉJUをやっていることで、今まで知らなかったことをすごくたくさん学べるのも楽しいです。「40歳からの学び直し」っていうのも結構モチベーションに繋がっていますね。

山越:スタートアップとして経営をしていると、周囲の人たちから学ぶことも多そうですね。

市原さん同じゴールに向かって一緒に頑張っていると、その仕事をやらなかったら出会えなかった人たちと出会えたり、結構戦友みたいな感じで深いところで繋がれたりするのはすごくいいことだなと思います。

専業主婦だったとしても PTA とかに取り組んだりすると、同じような状況にいられるんですけど、それが継続的でより広がりがある感じがしますね。

山越:では改めて、市原さんが人生で一番大切にしていることって何ですか?

市原さん「人とのつながり」ですね。

ちょっと偉そうになっちゃうんですが、自分がやる事業でもちろん幸せになっていただけるのは嬉しいですし、誰かが誰かの人生を犠牲にするような状態になってはいけないっていうのはすごく肝に銘じておりまして。

なので、一緒に働くメンバーにも絶対無理はさせたくないですし、お客様にも誠実でありたいと思っています。

山越:最後に、SHEshares読者、例えば夢を叶えたい気持ちがあるけどその一歩が踏み出せない人に、お言葉をいただけたら嬉しいです。

市原さん私自身ずっと自分に言い聞かせているんですけど、何かを選ばなきゃいけない時にその時点でどちらが正解かなんて絶対わからないことなので、選んだことを正解にしていこう」という気持ちを大事にしてほしいです。

私の場合はいやが応にも息子の病気っていう大きな節目があったので、そこでなんか全然違う生き方に飛び込めたっていうのがあって。
もし私の人生で息子の病気がなかったら、どうなってたか、私も踏み出せなかったかもしれないって思います。

山越:確かに、置かれた状況で「自分がどういう風に納得して生きるか」っていうのを決めるって大切ですよね。

市原さん:本当に、そういうことなんです。

編集後記

市原さんが何度も「仕事が好き」とおっしゃっていたのがすごく素敵で、私も心から好きな仕事をしていきたいですし、素直な想いを大事にして働いていきたいと思いました。

人生の中で出会った運命や選択を受け入れて、その経験から生まれたブランドだからこそ、誠実で素敵なサービスになっているということを感じました。きっとこれからも、市原さんやSOÉJUのブランドに勇気をもらう女性がたくさん出てくるのでしょう。

【取材】

フリーランス編集者/ライター 山越栞(やまこし・しおり)
明治学院大学文学部英文学科卒業。小学生の時の夢は小説家。中学高校とファッション誌の世界に憧れ、編集者を夢見るようになる。就職活動のときに「得意と好きが一致する仕事がしたい」とライターを目指し、書籍の編集プロダクションに新卒入社。約2年間の経験を積んだ後にフリーランスとして独立。現在はSHEshares編集部のほか、株式会社リブセンスにてコンテンツマーケティングチームのリーダーもしています。文章・編集・発信などをキーワードに、人々の生活がちょっと素敵になるお手伝いを目指して活動中。

【執筆】
SHEsharesライター いわた
SHEの広報レッスンに参加したことがきっかけで、何か新しいことにチャレンジしたいと思い、SHEsharesの一員になりました。普段はメーカーのブランディング担当。副業でライティングや編集、広報を担当しています。
*Twitter(@iwa518

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