広告・雑誌・Webメディアを経験してきた、編集歴15年のTRILL編集長が考える「編集の本質」とは

インタビュー

女性ファッション誌の世界で15年間、300冊以上の編集を担当してきた後、Yahoo! JAPANグループの女性向けWEB&アプリメディアTRILLの編集長を務めているという肩書きに、かなり緊張しながら迎えた、橋本夏子さんとの初対面。

凝り固まった私の緊張は、橋本さんの弾ける笑顔と、全面的にウェルカムな空気感によって、一気にときほぐれました。

「伝えたい思い、熱意さえあれば、誰でも、経験が少なくてもいい企画もできるし、編集にもライターにもなれる!」という橋本さんに、21世紀を生きる女性のためのレッスンクラブSHElikesでのご登壇に先立ち、編集者として大切にしている価値観や、ワクワクを追い続ける人生観についてお伺いさせていただきました。

⒈ 「良いものを伝えたい!」5回の転職は、そのための手段を変えただけ。

ー今日はお忙しい中本当にありがとうございます。とっても緊張しているのですが、お会いできる事を本当に楽しみにしておりました。

こちらこそありがとうございます。普段自分が取材する立場なので、勉強させていただきたいなと思いまして、私も楽しみにしておりました。ちょっと勉強のために、録音していいですか?

ーもちろんです!(ストイックすぎる。そして弾ける笑顔が魅力的すぎる・・・!)

「笑顔が本当に素敵でした・・・!」

実は私もインタビューが一番好きなんですよね。これまで雑誌の編集ではファッションが中心でしたが、現在編集長を務めるTRILLでは、女性の自分らしい価値観や選択の自由をお伝えするべく、自分らしく活躍されている女性たちに取材しています。現在第一線で活躍されている人でも必ず、最初の一歩を踏み出すためのきっかけがあり、そしてその人がどのように迷い、決断し、努力してきたか、ということをユーザーの皆さんにリアルにお伝えしていきたいなと思っております。

ー編集のお仕事の中でも、インタビューが一番お好きなんですね。人の魅力を引き出すことがお好きなんですか?

人でも物でも、自分が良いと思ったものをシェアしたい、効果的に伝えたいということを意識しています。もともとは広告代理店に新卒で入社したんですけど、やっぱり広告って、クライアント様の意見を一番重視しなければならないので、自分が良いと思ったものもではなく、クライアント様の意見を代弁することが大事。タイアップ広告を通し出版社の編集者と話す機会が多く、自分が本当にやりたいのは編集だと気づいたんです。広告代理店は3年を経たのち、編集職への転職活動をしました。

ー広告のお仕事から雑誌社での編集のお仕事は色々と異なる点も多く、0からのスタートは大変だったのではないでしょうか?

広告代理店時代も、編集さんとタイアップはしていたので、全体の流れとかはわかっていました。ただ、自分がチェックする立場なのと、実際に書く立場なのはかなり違っていたので、原稿執筆は苦労しましたね。その時の上司が元and Girl編集長で、現在プロデューサー的なお立場の方、とても厳しい方だったのでした。編集のスタート時期に徹底的に文章の基礎を学ぶことができました。

ただ一方で、企画作りは得意でした。世の中のトレンドや人や物の魅力を伝えるためにはどうしたらいいかなど、企画は広告代理店でも経験してきたので、そこは編集でも活かせました。

「お仕事の真剣モード」

ー企画力は天性のものなんですね。具体的にはどんなお仕事で、その企画力を発揮されたんですか?

例えば、当時はよく渋谷で読者モデルをスカウトしに行っていました。そこで益若つばささんにも会うことができたんです。普通だったら、身長の低さからモデルとしては難しい条件だったのですが、圧倒的に世の中のニーズを見抜いて発信する力に彼女は長けていたので、より内面にフォーカスした企画を考えて、魅力を伝えていきました。

ーそれはすごいですね・・・!読者のニーズと、潜在的な価値を見出されるのがお上手なんですね。

他にも小森純さんとか、舞川あいくさんなども同様です。とにかく媒体の目的と、読者の事を徹底的に理解して、そこに合う情報や人を、効果的に伝わるよう最善の調理をすることが編集の仕事だと思って取り組んでいました。雑誌のときは、実際に読者の方が紹介したものを買いに行き、そのものが売り切れたり、企画がランキングで1位になったりなど、読者にきちんと届いたという結果が見えた事も、すごく嬉しかったです。

「取材のお仕事も多いそうです」

⒉ 編集長の仕事は「徹底的な読者目線を持って、チーム力を高めること」

ー編集のお仕事は、本当に橋本様にとっての天職なんですね。しかし同じ編集といっても、雑誌の編集から、Webメディアの編集長になることに不安はありませんでしたか?

すごくありました。昨年の11月に出版社から電子メディアに移りました。でも、インターネットの世界での編集は本当に一からのスタートでしたし、日々進化しているので、どう見せたら最適かと常に勉強しています。

でも、雑誌の売り上げが低下している、つまり読者がいない状況では「どれだけ良い企画をつくっても、届かないのであれば意味がない。きちんと届く手段で伝えていくのが大事」と思い、転職を決意したので、「良いものを効果的に伝えたい」という想いが叶えられている今はとても幸せです。

「普段働くYahoo!のオフィスにて」

ー橋本さんにとっては、「良いものを伝える」ことがすべてで、雑誌もWebもすべては手段でしかないのですね。根っからの編集者という感じがして、すごくかっこいいです。

雑誌でも、WEBアプリでも、ユーザーのニーズはどこにあるのか、そしてそれに適する情報は何なのか、どう見せたらいいのかと、データの分析から始まります。たくさん溢れる情報をカテゴライズして、使用する媒体の目的と照らし合わせた時に、扱うべき情報を取捨選択して、その後読者のニーズに合わせて調理することが編集の仕事です。なので、編集をするという面では、紙もインターネットも、大きくは変わりません。

ー私も編集の世界に足を踏み入れた者として、情報収集力や、読者のニーズを汲み取る力など、本当に心から尊敬しております。それらのスキルは、具体的にはどのように磨かれているのですか?

企画を立てるときは、ユーザーのリアルは何なのかということを意識しています。だいたい一つの企画を立てるのに、20人—50人はヒアリングしますね。その企画を考えるとき、読者の顔が浮かぶくらいには、徹底して理解します。情報収集に関しては、私一人じゃ限界があるので、編集メンバーとのシェアや読者のニーズを伝えながら、カメラマンやスタイリストなどプロの集団に相談して、私はチーム力を高めることに従事します。

大御所のスタッフさんと仕事するときは常に緊張感がありますし、そのベテランに対して、意見するのときはとても抵抗感があります。でも、ユーザーに届かなければ意味がない、自分はユーザーの意見の代弁者であると自分を鼓舞して、ベテラン勢にも思ったことは伝えるようにしています。

「ロケ風景」

⒊ モットーは、スピードと人との繋がりを大切にする事

ー徹底的に読者に寄り添う姿勢がとってもかっこいいです。お仕事とプライベートなどの区切りもあまりなく、純粋に楽しんでいらっしゃる事が伝わってきます。そんな橋本さんが、お仕事をする上で大切にしていることがあれば教えてください。

モットーは、スピードと人のつながりを大切にすることです。企画は旬のうちじゃないと意味がないですし、みんなが良いと感じるものなんて、一瞬で変化していくじゃないですか。なので私は、思いついたら即行動して、すぐ企画にするスピード感は、他の編集者に負けない大きな私の強みだと思います。

そして人のつながりに関しては、特に横のつながりが大切なこの業界にいるということもそうですし、実際これまでの転職や、今の編集長としての仕事でも、今までの人脈に助けられているなと感じます。

ーお知り合いの幅がとても広そうです。具体的にどんな風に、人とのつながりを活かしていらっしゃるんですか?

一緒に仕事をしているスタッフさんが、TRILLのメッセージ性や企画に賛同してくれて、なかなかアポの取れない著名人へのオファーを手伝ってくれたり、今お仕事をしているスタッフさんや編プロさんも、出版時代の仲間であったり、周りの人にとても恵まれているなと感じています。

なので、私も出会った縁といただいた感謝の気持ちを大事にして、そのありがたいものをまた次の人へ渡すということを意識しています。

「打ち合わせも楽しく」

ー橋本さんの人としての魅力が、TRILLの大きな強みに活かされているんですね。人とのつながりを大切にする上で、心がけていることはありますか?

高校の頃の友人とも今も仲が良いですし、会社をやめる時も一回一回時間をかけて、丁寧にコミュニケーションをとっているので、離れてからもお互いを応援できる関係が築けているんだと思います。

人とのつながりを大切にすることで、情報収集のときに他の人は知り得ない情報が知れたり、困ったときに助けてもらえたりするので、何に置いてもすべての基盤は人と人の関係だなと思います。

⒋ 「一度きりの人生を自分らしく生きる」という女性たちを応援していきたい

ー人としてもすごく魅力的な橋本さんですが、今後のビジョンはどのように描いていらっしゃるんですか?

まずTRILLの価値を高めることを一番の目標にしています。今は私がコンテンツを考えつつ、チームを育成している最中なのですが、育成ができたら、今度はさらにTRILLを大きく広げていくところに手をかけたいなと考えています。

TRILLの価値としては、現代女性が求めているソフト面に寄り添うメディアとして、「あなたらしさを叶える」情報を届けていきたいですね。まさに8月1日から、少しずつその実現に向けた企画が公開され始めているので、ぜひチェックしてみて欲しいです。

https://trilltrill.jp/articles/1027207

(そう言って、夏木マリさんのかっこよすぎるインタビューをウキウキ見せてくださった橋本さん。「本気で遊ぶような仕事がしたい。だからプレイヤーという言葉が好き」などのかっこよすぎる夏木さんの発言に心底ときめいて、その魅力を語ってくださる様子は、「良いものを伝えたい!」という橋本さんの想いの源泉が表れているように感じました。)

https://trilltrill.jp/articles/894810

「ロケ撮影の様子」

ー好奇心旺盛で、人好きな橋本さんの楽しそうな生き方は本当に憧れます。そんな橋本さんから、常識や他者の目線に縛られて、好きなことに踏み出せない人に対して、何かアドバイスがあればお願いします。

よく言われていることかもしれませんが、「人生一回きり」ってことですかね。自分の人生はどんな原因、何があったとしても(社会とか他者の意見によってと、やらされたとしても)最終的にいろんな選択肢の中から選んでるのは自分なんだって事を認識できるといいのかなと思います。自分の現状を自分で認めれば、今何が自分に必要なのか、必要じゃないのかと、選んでいけるようになるのかなと思います。

ただいきなり自分で動こう、変わろう、とするのは難しいと思うので、人に話すとか、紙に自分の気持ちを書き出したりして整理をするというか、自分一人で抱え込まない方がいいのかなと思います。

私は何か迷ったら、すぐ人に相談しますし、いやなことがあったら紙に書き出します。そのマイナスな思いを自分で受け止められればOKで、その後はだいたい忘れちゃいます!(笑)でもそうやって、自分の想いを隠さないことが、自分に素直になって、自分の人生を生きる最初の一歩なのかな思います。

ーありがとうございます。橋本さんのポジティブさや、自由な生き方は、自己責任の覚悟と、他者に気負いなく頼れるところに支えられていて、そこが多くの人を惹きつける強烈な魅力になっているんだな、と直接お会いして痛感いたしました。

今日はお忙しい中、貴重なお話を本当にありがとうございました!

▷編集後記

元々素敵だなと思っていたTRILLでしたが、橋本さんのユーザーインサイトを捉えるスキルと、オリジナルな企画力で、さらに魅力がパワーアップしているのを強く強く感じました。お会いする前はかなり緊張していたのですが、本当に気さくな方で、どんなお話をお伺いしても学びばかりで、一瞬で終わってしまいました。すごく楽しかったです。私も、徹底的な読者視点と、オリジナルな面白さを大切に、これからもメディアを作っていきたいです。

SHEshares編集長 大原光保子

Yahoo! JAPANグループの女性向けWEB&アプリメディア TRILL編集長

橋本 夏子(はしもと・なつこ)

大手広告代理店後、出版社へ転職。 女性ファッション誌を15年、300冊以上の雑誌の編集を経験。 角川春樹事務所Popteen、主婦と生活社NIKITA、主婦の友社SCawaii!副編集長、Ray副編集長を経て、 現在Yahoo! JAPANグループの女性向けWEB&アプリメディア TRILL編集長。 著名人、モデルなどのインタビュー取材約100件、ファッション撮影数1000件、海外ロケ撮影20回以上を経験。 その他、モデル本、ダイエットムックなども書籍も30冊以上を担当。 「女性にとっていいもの、楽しいものをシェアしたい! どうしたらよりよく効果的に伝わるのか!」が企画作りのモットー。 「伝えたい思い、熱意さえあれば、誰でも、経験が少なくてもいい企画もできるし、編集にもライターにもなれる!」を幅広く伝え、実現化する活動を行なう。

https://trilltrill.jp/

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