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「人生の軸を決めたら、大切なことが絞られた。」カリグラファー島野真希さんに聞く、キャリア・家族・自分のベストバランス

インタビュー

書道家・カリグラファーとして活躍されている島野真希さん。3人のお子さんの母親を務めながらのキャリアとの付き合い方、理想とする人生観について伺いました。

クリエイティブなお仕事をしたい方、育児をしながらキャリアを積むことに興味のある方に伝えたいお話です。本記事は、ライター・鈴木実香里がお届けいたします。

WORKSHOPで教えている風景

書道家・カリグラファー 島野真希 大学を卒業後、3年間ウェディングプランナーを勤める。2012年に欧米のウェディングシーンで流行していたモダンカリグラフィーに出会い、独学で勉強開始。国内にモダンカリグラフィーを広める。現在は、ワークショップ・ウェディングやベビーのオーダー・企業や店舗のロゴのデザインなど幅広く活躍している。プライベートでは、3人のお子さんのママ。

 


目次

1.  モダンカリグラフィーの世界に惹かれ、独学で得たスキル

2.  正解がないのが面白い。この仕事は“愛せる文字”を探す旅

3.  諦めることを決めつけていたのは、自分だった

4.  何一つ欠けていない、自分のベストバランス


1.  モダンカリグラフィーの世界に惹かれ、独学で得たスキル

 

鈴木:書道家・カリグラファーとして活躍する島野さん。現在のお仕事内容を教えてください。

島野:現在は、一般的なカリグラフィーよりも自由でアート性の高い書体を書く「モダンカリグラフィー」の技術を使った制作、ワークショップなど人に教えることが主な活動です。一般のお客様は、ウェディングと命名書などのベビー系のオーダーが多いですね。

企業の案件は、パッケージのデザインやCMで使われる手書き文字の作成などさまざまです。雑誌に掲載していただくこともあります。

鈴木:以前、雑誌で島野さんの作品を拝見した際に初めて”モダンカリグラフィー”を知りました。現在のお仕事に至るまでどのような道のりを歩んできたのでしょうか?

島野:大学を卒業後、ホテル・式場・レストランを展開する会社で3年間ウェディングプランナーとして勤めていました。たまたま毛筆で文字を書く機会があって、そこで私が書いたものを社長が気に入ってくださったんです。

その後、店舗のロゴとか筆字で作るものがあるときには、ウェディングプランナーをしつつ、文字のお仕事をするようになりました。それに、この仕事は自分のライフスタイルに合わせて働き方を変えていけるのではないかと魅力を感じていたんです。

そして、出産を機に会社を退職後、2012年に書の仕事で独立しようと思っていたところに、仲が良かったアートディレクターさんとの会話でモダンカリグラフィーを知りました。欧米のウェディングシーンで、いわゆる整った書体のカリグラフィーではなくて、モダンなフリーハンドで書くカリグラフィーが流行り始めていると。

当時、国内にはトラディショナルなカリグラフィーのアーティストはいましたが、モダンカリグラフィーのアーティストはいなかったそうです。そこから独学で勉強を始めました。

和と洋を融合した命名書(ベビーボード)

鈴木:モダンカリグラフィーを独学で勉強されていたんですね。どんな勉強方法だったんですか?

島野:私にモダンカリグラフィーを勧めてくれたアートディレクターさんが、何人かアメリカのアーティストをピックアップしてくれて。その中の1人、Laura Hooper(ローラ・フーパー)にコンタクトを取ってみたりしました。

それから、オンラインの動画や簡単にモダンカリグラフィーを始められるキットをアメリカから取り寄せて学びました。あとは、YouTube 、 Instagram 、Pinterest など動画と静止画でいろいろなアーティストが書いている文字を真似して書いてみたり、分析したり。

そうするうちに、私が書くモダンカリグラフィーを「珍しい、見たことない、可愛い!」とウェディング業界の知人の紹介で雑誌に取り上げてもらうことになりました。

それから徐々に日本でモダンカリグラフィーが広がりつつあるときに、海外のアーティストが来日してモダンカリグラフィーを直接習える機会があったんです。今まで自分がやってきたことで習得したスキルを確かめることができました。

嫌でも練習しないと上手くならないし、失敗と成功の繰り返しでしたね。ペンを握らない日がないのは、今でもずっと変わっていません。

コラベルタイルに描くカリグラフィー(現在WEDDINGで大人気)

2.  正解がないのが面白い。この仕事は“愛せる文字”を探す旅

鈴木:ご自身で海外のアーティストにコンタクトをとる行動力が素晴らしいです! モダンカリグラフィーの先駆者が身近にいない中で、スキルアップしていくためにやっていらっしゃることはありますか?

島野:他の人が提案するようなことの半歩先の考え方ができるよう、わかりやすく言うと”一流のもの”に触れるよう意識しています。 字に関係なくてもアイディアとして最終的に字に繋がるものが、世の中にはたくさん転がっていると思うんです。例えば、こだわりの食材を使った美味しい料理を食べにいく、美術館に展示を見にいくでもいい。

美的感覚が磨かれるポイントは、字に関係ないところにもあるなと。色の組み合わせとか空間の使い方とか。あと、物と物の間隔や余白の使い方。文字を魅せることに繋がるようなものをたくさん見るよう心がけています。

鈴木:インスピレーションを受けることで美的感覚が磨かれ、文字に繋がるんですね。モダンカリグラフィーの中で魅力を感じていらっしゃる部分を教えてください。

島野:モダンカリグラフィーは、簡単に言うと正解がないんです。”絵を描くように文字を書く”と日頃から生徒さんにも伝えています。自分の気分や好きなものによって、文字の形が変わっていくところが面白さであり、魅力だと感じますね。

それって人生に寄り添うものだなと。自分の愛せる文字を見つけにいく旅ができるところが、モダンカリグラフィーの魅力です。

 リボンに描くカリグラフィー

3.  諦めることを決めつけていたのは、自分だった

 

鈴木:3人のお子さんがいらっしゃる島野さん。育児と家事と仕事の両立のコツはありますか?時間の使い方などを参考にしたいです!

島野:けっこう不器用な部分もありますよ。(笑)でも、早起きはこころがけていますね。だいたい4時、遅くても5時に起きています。自分の中でのコアタイムをきちんと持つ方が効率がいいと思っているので。 クリエイティブな内容の仕事は、この時間にするとルーティン化しています。

子供たちが起きてくるのは7時前後。それぞれを送り出して、日中に打ち合わせなど外での仕事を入れています。子供たちが帰ってきて、夕食やお風呂くらいまでは家族の時間です。家族の時間と仕事の時間それぞれに集中して、生活にメリハリをつけています。

それでも、子どもの成長に伴い大変なこともあって、またやり方を考えないといけないなと。コツというより、今は必要最低限のことしかしていないと思います。

鈴木:自分の作業効率がいい時間を見つけて、それを習慣にしていくのですね。今まで大きな壁にぶつかったことはありますか?

島野:はい。1番に思い浮かぶのは、海外案件が受けられないことです。海外からのオファーは、今まで実現していません。数日にわたってしまうので。国内だと一泊二日のタイトなスケジュールでも出張が可能なんですけど。子どもたちと何日間も離れる仕事は、今はしていません。自分にとって何が大切か、プライオリティの差もあると思います。今後、実現させたいですね!

仕事を優先しようと思えばいかようにもできると思いますが、我が家の考え方や家族観があるのでそれを大切にしています。大きな案件や今まで経験したことのないお仕事のご依頼があったら、主人に相談して最終的に決断することが多いですね。スケジュール含め、参考になるアドバイスをくれるので、心強い存在です。

フレキシブルに自分のスケジュールをコントロールできるうちは、うまく時間をやりくりしながら仕事を進めています。子どもたちといられるからこそ、できる仕事もあると思っているので。

時と場合にもよりますが、打ち合わせに子どもを一緒に連れて行くこともあるんです。あとは、クライアントさんに自宅まで来ていただいたり、近くのカフェで打ち合わせをするなどの工夫もしています。そうやって周囲からの協力が得られることは、本当にありがたいですね。

2017年3月に産まれた末娘と

鈴木:お仕事の依頼を受けられるよう、声を上げてこそ協力を得られるのですね。お仕事を通して前向きな変化はありましたか?

島野:キャリアについての考え方が変わりました。以前は、子どもが生まれると、積み上げてきたキャリアを諦めないといけないと思っていました。何か一つ諦めるのも嫌だったんですけど、腹をくくろうと。

そんな風に思っていましたが、仕事と育児を両立していくうちに、”諦める=ネガティヴ”ではないと思うようになりました。取捨選択の基準ができたし、それを判断する感覚が自分自身でもわかってきたんです。

自分にとっての大切なことが絞られ、その上で、また新しいご縁があって広がっていく世界がある ことも知りました。そこから、キャリアを諦めるのではなく、きちんと自分の中で見極めて働こうと前向きに考えるようになったんです。

4.  何一つ欠けていない、自分のベストバランス

鈴木:仕事と子育てのバランスは、育児しながら働く女性たちなら誰もが抱える悩みだと思います。そしてこれは、自分が大切にしたいことは何かを見極める機会でもありますよね。島野さんが人生で大切にしていることは何なのでしょうか?

島野:やっぱり、家族の幸せですかね。人それぞれ大事な物に対する価値観は違いますが、私は家族の幸せあってこそ仕事がうまくいくと思っています。家族が増えれば増えるほど、そう強く感じるようになりました。みんなで食卓を囲む瞬間や、家族全員揃って話している瞬間がかけがえのないものに感じるんです。

キャリア・家族・自分のバランスこそ命です。以前から、自分が人生を歩んでいくうえでのちょうどいいバランスを見つけたいと思っていました。周りの人から見たら中途半端だと感じるかもしれないですけど、私には今のバランスがベストなんです。”大切にしたいことは何なのか”といった軸を持つことが大切だと感じます。

鈴木:自分の中でのバランスを保てば、大切なものを守りながら輝いていけるんだと励まされました! そんな島野さんが今、一番実現したい夢はなんですか?

島野:モダンカリグラフィーの技術を使ってお仕事をされている方は、世界的に見ても一人で活動する場合が多いんです。一人のアーティストとして、カリグラフィーのお仕事だったり、デザイナーとしての仕事だったりいろいろな活躍をされています。

でも、私が実現したいのは、個々に限られたものではなくいろいろな文字のスタイルを持つアーティストたちが、皆それぞれ日の目を見て活躍できるようなプラットホーム・コミュニティを作れたらいいなと。アイディアを出し合ったり、作品の意見交換したりなどして、モダンカリグラフィーをもっと盛り上げていきたいですね!

 「好きこそ物の上手なれ」を英文で書いた作品。襖紙に書いたもの

鈴木:そのコミュニティから、また新しいものが創り出せそうですね。最後に、SHEsharesの読者に向けて、メッセージをお願いします!

島野:自分の気持ちに嘘をつかないでいてほしいですね。素直に進んでいくことが、一番良い未来に繋がると思うんです。今まで皆さんが生きてきた中で、いろいろなご経験がいろいろなタイミングであったかと思います。でも、「あの経験ははたして意味があったのか」なんてことは、ひとつもないはずです。

私もそうなんですけど、字でプロになろうとは考えていませんでした。こんな風に、人生のどこかで出会ったものが、まわりまわってライフワークになる瞬間がきっとある と思うんです。好きなことや過去の経験など、断片的でもひとつひとつのものが最終的にどう自分を輝かせるかわからないので。

「これは正解だから、これをしよう」とは思わずに、自分がワクワクする方に進んでいけばいいんじゃないかなと思います。

鈴木:島野さん、本日はありがとうございました!

アゲート(瑪瑙)スライスに描くカリグラフィー(こちらもWEDDINGで大人気)

▷編集後記

ご自身の人生観を大切にしながら、活躍の幅を広げられている島野さん。しっかりと軸を持つ真の強さ、ご家族のことを話す表情に暖かい人柄が伝わってきました。

”育児をしながら働く女性たち”が抱えるキャリアとの付き合い方も、人生の軸を持つことで、何一つ欠けることのない理想の生き方ができるのだと島野さんが体現してくださっています。

大切なことを選ぶために取捨選択し、地に足をつけて歩んでいけば、きっと自分のベストバランスが見つかるんだと実感できました。

 



鈴木実香里(Suzuki Mikari)
新卒で金融関係のベンチャー企業に入社後、営業職として勤務。
結婚・出産を経て現在は、ライターとして活動しています。
女性の生き方の多様化に関心があり、“自分らしく生きていきたい女性”に寄り添う文章を届けたいです。
http://suzuki-mikari.tokyo

Instagram:@mikari_0104

 

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