【コトバを探求するフリーランス】として、10年活躍し続ける秘訣は、圧倒的な想像力と脱力、そしてコツコツの積み重ね。

こんにちは、編集長の大原光保子です。

最近編集やライティング、インタビューのプロの方に対してインタビューさせていただく機会が多く、毎日緊張と興奮で吐きそうになっています、大原です。

今回は、「25ans」「ELLE JAPON」「Richesse」「Marisol」「GINGER」などで連載を担当するほか、書籍、広告、WEBなどでも活動し、さらにキャスティングコーディネイト、PRコンサルティングなどにも携わる、まさに無敵のフリーランサー吉野ユリ子さんにインタビューさせていただきました。

SHEでは、「書く技術」と「フリーランスの働き方」「SNS活用法」などについてのレッスンを開催してくださいます。

プロの編集者が伝える「書く技術」と「フリーランスの働き方」〜SNS活用法もレクチャー〜 | SHElikes(シーライクス)21世紀を生きる女性のためのレッスンクラブ

アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)、人気ファッション誌編集部などを経て<br> 現在はフリーランスとして、人気雑誌やWEB・書籍・広告などを担当する吉野ユリ子さんをお招きし<br> 編集者やライターのお仕事についてやそれぞれの媒体の違い、フリーランスとしての働き方、<br> またプロの目線から教わる、現代のSNSの活用方法や差別化についてお話し頂きます。<br> <br> 【レッスン内容】<br> ●編集やライターのお仕事とは?<br>  -出版社/広告/WEB の違いについてなど <br> ●フリーランスの働き方<br>  -フリーランスのメリット/デメリット<br>  -フリーランスとして仕事をしていくための準備<br>  (営業方法や、仕事の広げ方、子育てや家庭とのバランスについて)<br> <br> ●フリーランスや個人名で活躍するための情報発信のコツ<br>  -個人名で仕事をするためのSNS発信方法/SNSごとの使いわけ<br>  -ターゲットの絞り方/世界観を作っていくための情報収拾の仕方<br>  -SNSを差別化!ライティングの力で自分のSNSにコピーをつけていくコツ<br> etc... <br>

SHElikes(シーライクス)

レッスンに先立って、パワフルにお仕事を続ける人生観と、幅広いジャンルのお仕事を高クオリティでまっとうし続ける具体的な方法について教えていただきました。

それでは吉野さんのポジティブ編集者論 はじまりはじまり〜!


⒈ 吉野さんに幅広く仕事が集まる理由

ーとても幅広くご活躍されている吉野さんですが、具体的には毎日どのようなスケジュールで動いていらっしゃるのですか?

最近は、だいたい毎日2-3件の取材と、その合間に作業や打ち合わせを行っています。

月末発売の雑誌の連載だと、だいたい1-2ヶ月前に依頼がきて、企画からキャスティング、アポ入れ、取材、記事作成まですべて担当することも多いです。

でも取材のない連載もありますし、ジャンルも女性のライフスタイルに関するものから、インテリア、花、書評、スポーツ、美容など、とにかく多岐に渡るので、その都度調整しながらやっています。

ーそれだけ多岐に渡るお仕事を継続していらっしゃるなんて、本当にパワフルですね...!

「ジャンルの幅が広い」というのは、一般的には弱みだと思いますが、私にはそれしかできなかったんです。万人にはおすすめできませんが、他者と比較したり、リサーチして効率のよい選択肢を探すよりも、ひたすら今目の前にある、自分のできることに邁進することで勝手に道は作られるのではないかと思っています。


「ワインのウェブサイトにてインタビューしているところ。」

ー普通の人では、そんなに幅広く専門性を高めることは難しいのでは、と感じてしまいます。吉野さんはどうやって工夫していらっしゃるんですか?

これまでの経験と人脈の組み合わせかな、と思っています。例えば化粧というジャンルで言えば、今最先端のコスメであれば、美容家さんとかの方がよっぽど専門知識があると思います。私に依頼がくるのは、食事と絡ませた美容の企画や笑顔美容、また広告よりの美容記事など、王道ではないけど、担当できる人がいないような分野が回ってきます。(笑)

また広告コピーライターとして仕事をすることもあるのですが、コピーライター専門の方はコトバの技法においては私よりずっと優れていると思いますが、私は商品を掲載する雑誌社側の視点も意識したコピーを作成できるということが強みになっていると思います。

ーまさに専門分野の組み合わせによって、独自のポジションを築かれているのですね。本当に理想のキャリアすぎます...!では、そんな幅広いお仕事の中でも、吉野さんが一貫して大切にしていらっしゃる事などあれば教えてください。

まず取材においては、当人が気づいていない、他者から見た「すごいところ」を引き出したいと思っています。そのためときには「普通はこう考えそうですけど、あなたはこうなんですね」と他者との比較の中で、引き出していくようにしています。

優等生タイプの方の中には、いわゆる”綺麗な正解”を言おうとしてくれる方もいらっしゃるんですけど、それでは本質的なその人の良さがなかなか出せないんですよね。ご本人の気持ちを毀損しない形で、過去の辛い経験や、人間的な一面も、本人の魅力であることが伝わるように執筆することは常に意識しています。

「本の執筆を手伝わせていただいたパトリスジュリアンさんと、恵比寿アトレにてトークイベント。2015年秋」

ー相手の魅力を引き出すコミュニケーションをしていらっしゃるんですね。

たまに「私自身も気づかなかった事に気づかせてくれてありがとう。」と言われることがあって、すごくやりがいを感じる瞬間です。

ーそれはインタビュアー冥利につきますね...!吉野さんは取材が一番お好きなんですか?

取材が一番好きですが、コピーを考えるお仕事も好きです。開発者の話を何度も聞いて、その商品によって生まれるユーザー体験を何十時間も想像して、調べて、を繰り返す中で、15字以内のコトバを生み出す。開発者もマーケティング担当者も気づいていない商品の魅力を引き出して、表現するのがすごく好きです。

例えば、POLAさんのサインズショットという化粧品のコピーは、「笑顔のための美容液」というコトバをみんなでつくりました。元々商品の説明を聞いていたときは、シワは消したいもの、というネガティブからの説明が多かったんですが、そこに違和感を感じ、色々試行錯誤する中で、シワのある笑顔も泣き顔も怒った顔もみんな素敵だから、「シワを気にしなくていい美容液」という方向性にもっていったんです。

このコピーが生まれたことで、様々な企画や宣伝に「笑顔」というキーワードが広がって、その結果反響も生まれて大成功でした。

でもこれは数ある仕事の中の成功例で、いつもそうとは限りません。たくさんパターンを出して、なんどもなんども粘って考え抜いて、それでもうまくいかないこともあります。

それでもずっと努力を続けるしかないので、常日頃から、人の気持ちやコトバ一つ一つをないがしろにしないようできるだけ意識しています。

「愛犬のマロ。今は一緒に暮らしていないけれど定期的に会いに行ってお散歩をしている。」

⒉ コトバの探求は、自分供養のため。毎日コツコツと継続する。

ーコトバに対する思い入れがすごく強いんですね。

基本的にはすべて言葉を通した自分供養のような感覚です。コンプレックスがいっぱいで、失敗ばかりしてきた過去の自分に伝えたいことを伝えているように思います。もしくは今の自分に対してもそうであるかもしれません。

たまに原稿を書きながら号泣することもあるんです。取材相手や、物の深い価値に触れて、感動して、絶対に私のテキストを通すことでこの感動を削ぎ落としてしまってはならない、と強く思っています。

ーコトバに向き合う姿勢が本当にかっこいいです。失敗ばかりしてきた過去の自分というのは、どのような自分のことですか?

これを話し出すとキリがなくなってしまうんですけど、もともと私は自分のことを男だと思っていたんです。幼稚園くらいの頃から。性同一性障害の一種なのかもしれませんが、いつかバレるんじゃないか、いつか体も男になるんじゃないかと不安だったんです。

「トライアスロンを始めたばかりのころ。2011年。」

ー男かもしれないと思っていたんですね...!

でもだからこそ、ずっと女の子になるための研究を続けてきました。小さい頃は「女の子にならないとやばい」と思っていたんです。

なので小4頃までは、クラスで一番かわいい女の子をベンチマークして、毎日観察して真似をしていました。例えば、泣く時は片方の手で拳をつくって目をこすりながら、反対の目から涙を流すとか、バウンドの法則といって目線は一回下に落としてから変えるとか、Xの法則で右にあるものは左手でクロスして取るとか、あと私が「舌音と唇音の法則」と呼んでいる研究結果は、なるべく唇が密着するコトバを多く使うと可愛く聞こえる、というものもあります。細かい工夫をたくさんしていました。

「ヴァンサンカンにてプランジャパンのイベントに対談相手として登壇。長らくプランジャパンのサポーターもしてきたこともあり、チャリティ系の仕事も多い。」

ーそんな法則があるんですね。見て分析して真似をするのを幼稚園の頃からやっていたなんて、すごすぎますね。

でも小4くらいから、ボーイッシュな女の子が美人だったり、ふんわり女の子らしい子がいちばんではなくなってきたことで、ベンチマーク先がわからなくなり、私がなりたいのは「かわいい女の子」ではなく、「普通の女の子」だったということに気がつきました。

そしてそれからは、クラスで一番普通の女の子をベンチマークするように変わったんです。そこでも徹底的に、移動教室は何分前に移動を開始して、誰と一緒にどのポジションで歩くのか、とかお弁当は誰とどう食べるかなどを観察して分析していました。

そんなストーカーみたいな事をしている時点で普通の女の子ではないんですけど、でもそれが今の女性雑誌や、広告で女性のインサイトを捉えることに活きていて、ユーザー視点の理解に役立っています。

「2015年横浜トライアスロンのもの。実はこの時お腹に子供がいたことに気づいていなかった。」

ーまさに自然とやっていた事が、今の吉野さんの強みである、圧倒的な想像力による他者理解に繋がっているんですね。

コトバはそんな私の世界を広げて、癒してくれるもので、コトバの探求は自己の探求に似ています。

これまでに自分を救ったコトバはたくさんありますが、例えば自分が結婚する前後だったのに結婚にほとんど夢も希望も持っていなかった時、中井美穂さんが、「理由のない結婚」という企画で、「たかが結婚」と言っているのを見て、「あ、こんな風に考えてもいいんだ」とすごくほっとしたことを覚えています。

読者の心を動かし、行動を変化させるためのコトバを常に探求し続けています。取材も、一応録音はしますが、ほぼテープ起こしはせず、全文手書きでメモして、その時感情が動いた箇所に印をつけて、記事を執筆していくようにしています。なぜならその時の感情を一番大切にしたいから。ただこの時、独りよがりな文章にしないため、読者の立場に立ちながら執筆することは強く意識しています。

「子供を連れて行けるパークヨガは色々参加。写真は代々木公園だけれど、普段は駒沢公園の会に参加することが多い。」

⒊ 毎日予定が詰まっているからこそ、常日頃からリラックス。

ーひとつひとつにこだわりを持って、感情を大切にお仕事していらっしゃる吉野さんですが、子育てもしつつ、お仕事と両立させる毎日で、どうオンオフを切り替えていらっしゃるんですか?

リラックスのための時間を取ることは難しいので、できるだけ常にリラックスした精神状態で過ごすようにしています。(笑)

「初めてのアイアンマン完走。アイアンマンジャパン(北海道)」

ーそれができずに悩んでいる人がたくさんいるので、ぜひアドバイスをいただきたいです。

仕事中キリキリしてしまうというのは、だいたい時間・難題・感情の3つが原因だと思います。時間については、徹底した時間管理が効果的。私はタスク別にエクセルで管理しつつ、行動スケジュールは30分単位で、すべて手書きで手帳に記入しています。だから今日の私は、昨日の私の命令に従うだけ。そうすると、実際に予定が詰まっていても苦しくなることはありません。他の作業しているときに、他のことを考えてもしょうがないので、目の前のことに集中できるからです。

そして次に、難題に苦しんでいる人には、一歩一歩少しずつ進むことの大切さを伝えたいです。たいていの作業は分解して考えると基本単純な行動の積み重ねです。パソコン作業も実際は指を動かすだけですよね。(笑)混乱して慌てそうになったら、問題やすべきことを行動レベルで細かく書き出してひとつひとつ潰していけば、かなり解消できるはずできます。

そして最後、感情については、難しいけれど嫌なことはできるだけ聞き流して、解決すべき本質だけに集中するようにすればいいと思います。大事なのは、ほぐれていることだと最近つくづく感じます。強い力を発揮すべきスポーツでさえ、「上手な脱力」が最大限パフォーマンスを発揮するコツだというシーンは多いと思います。適度な緊張は必要と言われますが、それは日本人なら無理しなくてもみんな持ってると思いますので。苛立っている人に対しても微笑みでほぐせるくらいになるのが理想です。

「娘と。夫の実家名古屋にて。歩き始めたばかりの頃。2017年春」

でも多分、会社員だと「ここで一生働けるか?」を考えてしまうので、いやな事があったときに流すのは難しいと思います。自営業はその点、いやだったらやめればいいし、選択権が自分にもあると思えるのがいいですよね。会社員の人も、「いやだったらいつでもやめていい」と思えたら楽になって、逆に続けられるということもあると思うのですが…難しいですね。

ただ、流さずに悩む事で見えるものもたくさんあるので、一概に悪いとは言えません。バランスが大事ですよね。

ー吉野さんの考え方は、すごくシンプルで、かつ決めつけがないのですごく安心します。

正解を決めつけないことは私自身、とても大切にしています。常に、その時の自分にとっての正解の仮説は持っていますが、いつだってこれも間違っている可能性はあるし、変化もするだろうと思っているので、真っ向から否定したり、決めつけたりはしません。

すべての人の立場、自分が敵だと思う相手、悪だと思う事柄に対しても、想像力を忘れないで、自分の考えも相手から見たら同じくらい間違って見えるのだということを念頭に置いています。正義や正解は思考停止になりますので。

ーそれはまさに多様性が求められる現代社会で生き抜いていく上で、必要な考え方ですね。吉野さんのようなフラットで、シンプルで、ポジティブな考え方ができる人にこそ、フリーランスやコトバの仕事は向いているんだろうな、と感じました。
今日はとっても多くの学びをありがとうございました!

▷吉野ユリ子さんのレッスン情報

レッスン名:「プロの編集者が伝える「書く技術」と「フリーランスの働き方」〜SNS活用法もレクチャー〜

開催日時:2018年8月18日(土)10:00〜12:00

開催場所:SHElikes 表参道教室(※表参道駅から徒歩5分の場所です)

▼申し込みはこちら

プロの編集者が伝える「書く技術」と「フリーランスの働き方」〜SNS活用法もレクチャー〜 | SHElikes(シーライクス)21世紀を生きる女性のためのレッスンクラブ

アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)、人気ファッション誌編集部などを経て<br> 現在はフリーランスとして、人気雑誌やWEB・書籍・広告などを担当する吉野ユリ子さんをお招きし<br> 編集者やライターのお仕事についてやそれぞれの媒体の違い、フリーランスとしての働き方、<br> またプロの目線から教わる、現代のSNSの活用方法や差別化についてお話し頂きます。<br> <br> 【レッスン内容】<br> ●編集やライターのお仕事とは?<br>  -出版社/広告/WEB の違いについてなど <br> ●フリーランスの働き方<br>  -フリーランスのメリット/デメリット<br>  -フリーランスとして仕事をしていくための準備<br>  (営業方法や、仕事の広げ方、子育てや家庭とのバランスについて)<br> <br> ●フリーランスや個人名で活躍するための情報発信のコツ<br>  -個人名で仕事をするためのSNS発信方法/SNSごとの使いわけ<br>  -ターゲットの絞り方/世界観を作っていくための情報収拾の仕方<br>  -SNSを差別化!ライティングの力で自分のSNSにコピーをつけていくコツ<br> etc... <br>

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▷編集後記

 とにかく徹底された読者視点、クライアント視点への理解、そして幅広い好奇心を可能にする、圧倒的に丁寧なお仕事ぶりが、多くの人に求められる理由なんだろうな、ということを直接お会いして痛感いたしました。自分で自分を磨いていくしかないフリーランスだからこそ、自分の中の基準はかなり高く設定しておくことが求められるのかもしれません。

私も背筋を伸ばして基準を上げていこうと思います。

SHEshares編集長 大原光保子

ライフスタイル・ジャーナリスト

吉野ユリ子(よしの・ゆりこ)

1972年生まれ。立教大学文学部卒業後、アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)ファッション誌編集部などを経て2008年よりフリーに。「25ans」「ELLE JAPON」「Richesse」「Marisol」「GINGER」などで連載を担当するほか、書籍、広告、WEBなどでも活動。またキャスティングコーディネイト、PRコンサルティングなどにも携わる。趣味はトライアスロンでアイアンマンを3度完走。2歳の娘をもつ。

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